下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤とはどんな病気ですか?
下肢の静脈にある逆流防止弁が壊れる事によって起きる病気です。逆流防止弁とは上向きに(心臓に向かって)しか開かない弁のことであり、この弁と下腿の筋肉ポンプ作用の働きで、脚の静脈の血液は重力に逆らって上向きに心臓に向かって流れています。この弁が壊れ脚に血液が逆流し、脚に貯まる(うったいする)ことによって様々な症状が起こります。
主な症状はどういうものですか?
脚に血液が逆流することにより様々な症状が出ます。ぼこぼことコブがみえる見た目の問題もありますが、見た目だけで自覚症状のない患者さんから強い症状を訴える患者さんまでいらっしゃいます。自覚症状としては皮膚の火照り、かゆみ、ふくらはぎのだるさ・痛み、下肢のむくみなどがあります。また、夜間寝ている時に足がつる(こむら返り)こともあります。他にも皮膚がピリピリする、脚先が冷たく感じるなど様々な症状を訴えられる患者さんもいます。症状は通常午後から夕方に強くなり、朝起きた時は良くなっているケースが多いです。また、通常コブ自体は痛くないのですが、コブの中に血栓ができて赤くなって腫れて、痛くなって来院する方もいらっしゃいます。静脈瘤は適切な治療を行わないと悪化して湿疹や色素沈着などの皮膚炎を起こし、更に悪化すると皮膚潰瘍ができたり、出血したりすることもあります。
放置するとどうなりますか?
一言で言うと、放っておいても死んでしまう病気ではありませんのでご安心下さい。また、歩けなくなったり、足を切断しなければならなくなったりすることもありません。ただ、放置しても自然に治ることはなく少しずつ進行しますし、QOL(生活の質)は下がってしまいます。何もしていないと静脈瘤が進行し、静脈瘤が原因で湿疹や色素沈着、潰瘍を生じることもあります。症状のある方は一度病院で検査を受け、どのような状態か医師から説明を受けていただくことをお勧めします。
下肢静脈瘤のできやすい人はどんな人ですか?予防はできますか?
生まれつき、静脈瘤のできやすい体質の方もいらっしゃいますが、一番の原因は下肢の静脈に負担をかけることです。特に、立ち仕事(調理師、美容師、教師)をされている方や、妊娠・出産のご経験のある方です。静脈瘤の症状がでてくるのは、40~60代の現役世代の方が多いのですが、実は若いころに既に静脈瘤ができていて、気づかないうちに進行していることも多いのです。立ち仕事をされている方は普段から生活習慣を見直すことで悪くなるのを予防することができます。長時間の立ち仕事やデスクワーク時は、こまめに脚の筋肉を動かしたり、下肢を挙げて休憩を取ったりすることが大切です。極端な肥満も悪化の原因になりますので注意が必要です。
静脈瘤にできた血のかたまり(血栓)が心臓や脳に飛ぶことはありますか?
静脈瘤の中にできた血栓が心臓や脳に飛ぶことは特殊なケースを除き殆どありません。一般的にいう静脈瘤は皮膚のすぐ下の浅いところにある静脈(表在静脈)の病気です。皆さんがよく聞かれる血栓が飛ぶという病気はそれとは別の深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)という病気のことです。これは、脚の深いところの静脈(深部静脈)にできた血栓が、深部静脈の壁から剥がれて、心臓の方へ流れていき、その先にある肺の血管に詰まってしまう病気です。そのため息が苦しくなったり、最悪の場合は死亡することもあります。しかし、下肢静脈瘤は深部静脈血栓症と直接的な関係はなく、静脈瘤だからといって特別に深部静脈血栓症になりやすいというわけではありません。
下肢静脈瘤を診断するのにどのような検査をするのですか?
現在、下肢静脈瘤の標準検査は超音波検査(エコー)です。
腹部の検査でも使われる超音波診断装置を使った検査です。ゼリーを塗るだけなので痛みもなく、繰り返し検査を行うことができます。通常静脈瘤の検査の際は立ったままや座って足を垂らして行います。当院では長時間立ったままで気分が悪くなるのを防ぐため、傾斜するベッドで横になっていただき行います。熟練した技師または医師が行えば、静脈瘤の診断はこの検査だけで可能です。この他に静脈造影(ベノグラフィー)という古くから行われている検査がありますが、造影剤アレルギーや被曝の問題から、特殊な場合を除き行っておりません。

下肢静脈瘤の治療法について

どのような治療法がありますか?
主な治療法には保存療法(圧迫療法)、硬化療法、手術療法があります。
実際、圧迫療法だけでは治ることはなく、これ以上進行しないようにする予防でしかありません。硬化療法は膨らんだ静脈に薬を注入して潰してしまう方法ですが、手術療法と組み合わせて行うことが多いです。手術療法には高位結紮術、ストリッピング術とレーザー治療があります。どちらも原因となっている逆流静脈の逆流を止める手術ですが、高位結紮術は再発率が高く、当院ではほとんど行っておりません。
保存療法とはどのような治療ですか?
生活習慣の改善、弾性ストッキングの使用など手術を必要としない治療法のことです。日常生活では長時間の連続した立ち仕事、座ったままの仕事は避け、仕事中は1時間に5~10分間は足を心臓より高くして休憩するか、足首を曲げ伸ばししたり、できれば歩きまわったりして下さい。下腿の筋ポンプ作用が、脚に貯まった血液を循環させてくれます。寝るときには座布団1~2枚を布団の下に敷いたりして足を少し高くして休んで下さい。立ち仕事や外出の時には弾性ストッキングを履いて圧迫療法を行って下さい。ただし、圧迫している間は足に血液が貯まるのを防ぎますが、外すと元に戻りますので、静脈瘤が治るわけではありません。保存的治療とは基本的にはこれ以上進行しないように予防するのが目的です。
弾性ストッキングとはどういうものですか。
弾性ストッキングは強い圧で脚を圧迫し、上に向かって段々圧が弱くなる構造をして血液が足にたまるのを防ぎます。静脈瘤の診療では市販の弾性ストッキングよりも圧迫力の強いものを使用します(20~30mmHg)。ストッキング、パンストタイプ、ハイソックスなどの種類があります。健康保険が効きませんので患者さん自身に購入していただくことになります(4,000円前後)。尚、硬化療法、手術後も一定期間弾性ストッキングが必要になります。
硬化療法とは何ですか?
硬化療法とは静脈瘤に直接細い針を刺して静脈瘤内に硬化剤を注入して、静脈瘤を固めてつぶしてしまう方法です。外来で簡単に行うことができますが、ある程度進んだ静脈瘤には効果が少なく再発してしまうという欠点があります。そのため、手術後に残ってしまった静脈瘤を治療する場合や特殊型の静脈瘤に対して行います。当院では硬化剤を空気と混合して泡状にして使用するフォーム硬化療法を行っており、色素沈着や痛みなどの合併症を減らすようにしております。
手術療法にはどんなものがありますか?
手術の代表的なものには高位結紮術、ストリッピング術とレーザー治療があります。どれも原因となっている静脈の逆流を止める手術です。しかし、足のつけねの静脈を縛る高位結紮術は再発率が高く、当院ではほとんど行っておりません。ストリッピング手術は弁不全の生じた静脈の中に細いワイヤーを入れてワイヤーごと静脈を抜き去る手術方法です。静脈を抜き去る時に強い痛みをともなうため、以前は全身もしくは下半身の麻酔で行っていましたが、局所麻酔法の進歩により、日帰りで行えるようになりました。レーザー治療はストリッピング手術と同様に弁不全の生じた伏在静脈の逆流を防止する手術法ですが、ストリッピング手術のように静脈を抜かず、静脈内にレーザーファイバーを挿入して、血管の内側にレーザー光線をあて、血管を内側から焼いて閉塞させる方法です。どちらも血液の逆流を防止することが目的ですが、大きな違いはレーザー治療の方が、通常小さな傷で済みます。
静脈をとったり、レーザーや硬化療法で閉塞させてしまっても大丈夫ですか?
ご心配いりません。脚には表面を走る静脈(表在静脈)と深いところを走る静脈(深部静脈)があり、血液の殆どは深部静脈を通って心臓へ戻ります。通常、静脈瘤で手術の対象になるのは表在静脈です。表在静脈はいくらでもネットワークがありますし、血液は最終的には深部静脈を流れていきますので表在静脈の一部を取り除いても、閉塞させても大丈夫です。
手術は痛くないのでしょうか?
手術中は麻酔が効いているので痛みはほとんど感じません。ただその局所麻酔をする際は多少の痛みを感じます。手術後も局所麻酔が半日ほど効いているのであまり痛みは感じませんが、麻酔が切れてくると少し痛みを感じます。そのため、飲み薬の痛み止めを使用して痛みをとります。レーザー治療の際は術後1~2日経過した頃につっぱり感に近い痛みを生じることがありますが、通常2週間くらいで落ち着きます。また、傷口や静脈を取り除いた部分を押したり、動いたりした時の痛みも徐々に少なくなってきますが、人によっては数ヶ月間続くこともあります。

診療費用について

健康保険はききますか?
弾性ストッキングによる圧迫療法は、入院時の深部静脈血栓症予防、がんの手術後のリンパ浮腫に対しては保険が適応されますが、静脈瘤に対する治療には保険は適応されません。硬化療法と手術(高位結紮術、ストリッピング手術、一部のレーザー治療)には保険がききます。一部のレーザー治療とは、薬事認可されたレーザー(エルベス980nm)を使用して、レーザー治療の講習を受けた医師がいる病院で行った場合のみ2011年1月より保険診療で行うことができます。その他のレーザーを使ったレーザー治療やラジオ波治療は保険が適応されません。当院では患者様の負担を考え、保険適応となっているレーザーのみを採用しております。
治療費用はどのくらいですか?
初診時にエコー検査まで行いますので、この際に初診料と合わせて約2500円かかります。また、ストッキングの購入に4000円前後かかります。手術になった場合には健康保険が3割負担の方で、手術前検査が約5000円、日帰りストリッピング手術が4万円弱、血管内レーザー治療が約4万6,000円、硬化療法が1回約5000円になります。1割負担の方はこの3分の1になります。この他に手術後再診料などがかかります。

日帰り手術について

他の病院では入院が必要と言われましたが本当に日帰りでできますか?
多くの病院では下肢静脈瘤の手術は全身麻酔もしくは下半身の麻酔で行われるため、3日から1週間の入院が必要となります。しかし、当クリニックではTLA麻酔という低い濃度の麻酔薬を使う方法でストリッピング手術やレーザー焼灼術を行なっております。この方法では意識は保たれたままで、手術直後から動けますのでそのまま歩いて家に帰っていただくことができます。ですから、日帰りでできます。
他の病院で日帰り高位結紮術を勧められましたが、ここではやれないのですか?
日帰りで下肢静脈瘤の手術を行うために、ストリッピングやレーザー治療でなく、局所麻酔による高位結紮術のみを行なっているところもあるようです。しかし、最近の学会報告では高位結紮術はストリッピング手術やレーザー治療に比べ再発が多いことがわかってきています。そのため、当院では高位結紮はほとんど行っておりません。代わりに再発の少ないストリッピングやレーザー治療を局所麻酔法を工夫して日帰りで行っております

その他のご質問

術後の日常生活はどうすればよいですか?
術後はご自身で帰宅していただき、その日から普通に日常生活を送ることができます。避けていただきたいのは、正座や長時間の立位です。激しい肉体労働でなければ数日後から仕事に復帰出来ます。スポーツは手術後約1ヶ月経過してからになります。
入浴はレーザーだけですと術後2日目から入浴可能、ストリッピングや瘤切除をされた方ですと、術後2日目よりシャワー、1週間後より入浴可能です。
手術すれば再発はしないのですか?
正しい治療をすればすぐに再発することはありませんが、下肢静脈瘤は体質的な病気ですので、治療を行なってから10~15年たつと10~20%程度再発することがあります。特に40歳未満で治療が必要になった方や、立ち仕事を続けられている方は再発の危険性が高くなります。しかし、再発をしても早いうちならば硬化療法という注射の治療で治すことができることもあります。
年齢制限などはありますか?
ありません。特殊なケースを除きほとんどの方が年齢に関係なく治療することができます。しかし、寝たきりでなく、病院にご自分で歩いて来られることが条件です。
高血圧の薬や血液をサラサラにする薬を飲んでいますが、手術できますか?
高血圧の薬は基本的に問題ありません。ストリッピング手術は血液をサラサラにする薬を一時的に止めてもらいます。しかし、レーザー治療であれば血液をサラサラにするお薬を内服したまま手術を受けることが可能です。この他にも手術に際して中止していただく薬がございますので、手術前に担当医にお問い合わせ下さい。
妊娠中に下肢静脈瘤になってしまったのですが?
妊娠中は胎児の圧迫やホルモンバランスにより下肢静脈瘤が一時的に悪化します。しかし、妊娠中は不必要な薬剤の使用は避けた方がいいため、手術などの積極的な治療はお勧めしません。そのため、妊娠中は弾性ストッキングを着用して圧迫療法を行います。出産後、下肢静脈瘤は徐々によくなりますので、半年~1年後に再度診察を受け、超音波検査を行なった上で治療方針を決めることをおすすめします。
症状が静脈瘤に似た病気はありますか?

シビレ

下肢静脈瘤ではシビレがくることはほとんどありません。脚がしびれる疾患では脊柱管狭窄症、坐骨神経痛、むずむず脚症候群、脳梗塞などがあげられます。

冷え

静脈瘤でも冷えを訴える患者さんはいますが、これ以外に糖尿病による血行障害、閉塞性動脈硬化症、自律神経の乱れなどでも生じるため注意が必要です。

膝の痛み

下肢静脈瘤では膝に痛みが生じることは絶対ありません。変形性膝関節症が疑われますが、静脈瘤は変形性膝関節症の方に併発しやすい傾向にあります。

跛行(歩いていると脚が痛くなる)

閉塞性動脈硬化症や脊柱管狭窄症などが考えられます。

立っている時、あるいは座っている時に足がだるい、痛いなどの症状が起きますか?
長時間の立位や座位でふくらはぎがだるくなったり、重痛くなるのが静脈瘤の症状です。
もう1つ、静脈による跛行があります。これは、筋肉ポンプで静脈血が送られている間は痛みが出ないのに、立ち止まると静脈血が送られなくなり、足が腫れて痛くなります。
一日中、両足がだるい・むくみ・足がつる・重痛いなどの症状がありますか?
足のだるさやむくみ、足がつる、重痛いなどの症状が左右とも同程度で、朝起きた時から1日中続く時は、静脈瘤以外の原因を疑います。典型的な静脈瘤の場合は朝起きた時症状が最も軽く、午後から夕方にだるくなります。
歩き始めと、しばらく歩いた時で症状は違いますか?
運動時、特に動き始めに足がだるい・むくみ・足がつる・重痛い症状がある場合は整形外科疾患であることが多いです。また、歩き続けるうちに症状が強くなり、数分休んだり、腰を曲げたりする(前かがみになる)と再び歩くことができるようになる場合は、脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症などを疑います。

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診察時間

平 日
外来: 8:45-17:00(月・水
手術: 8:45-17:00(月・水
エコー検査: 8:45-17:00(月・水
※祝日はお休みになります。

名古屋血管外科クリニック

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